継続的経営革新(業革の過程)において、社員を意識変革する際、他企業の視察や各種研修会への参加を禁じたことがあった。
世の中がどうなっているのか。 業界の状況はどうか。
また、競合他社の戦略など気になるのが世の常、人の常である。 成功例をモデルとして自ら刷新に役立てたいと思うのは、自己啓発の第一歩である。
今日まで、日本企業の経営革新は、常に他にモデルを求めて推進してきた。 I堂クループにしてもスタートの時点では同様であったはずである。
だが、企業はすべて、一定の規模まで成長し、企業規模の適正化による組織、風土が形成されてからは、自ら進むべき途を切り拓かなければならない。 I堂グループにとって模倣すべきモデルは、今日もうなくなったのである。

それは、革新している自己の状態を十分に理解しているからである。 道なき道を歩き出した以上、模倣は後退を意味する。
模倣によって他者依存の悪習を組織内に延らせた時、企業の活力は失われていく。 流通段階における摩擦、葛藤の壁”ガスがかかって一歩先が見えない“こうした不透明な状況の中にあって、流通に関わる企業が自らの位置、進むべき方向、目的実現のための方法等を定めるうえでのガイドは、流通論であるだろう。
流通論は、“商”の自立を悲願とした故・S・H氏の『流通産業論』などを先達として、いまなお議論されている。 だが、近年ではその内容が一変しつつある。
それは、商品寿命の短サイクル化や多品種・少量・高頻度物流、そして流通の各段階において発生している過剰在庫と返品ロス、さらには人手不足の慢性化によるコストアップなど、流通環境が大きく変貌していることに起因する。 すなわち、流通環境を変えている課題に対し、生・配・販三層が共通の戦略課題として取り組み始めたことである。
また、情報ネットワークシステム技術の進展によって、流通情報が従来からの生・配・販三層の分業構造の壁を崩し始めたことも伝統型流通論を革新させる新たな要因になっている。 小売業の売れ筋商品情報に基づき、卸売業の物流システムとメーカーの生産システムが一元的に機能すれば、産業論的には生・配・販三層の垣根は意味をもたなくなる。
だが現実には、各業界の壁は今なお厚い。 不透明な商慣行を是正するための各種施策は講じられたものの、生・配・販三層においては今なお鋭い対立、あるいは摩擦や葛藤を生じさせている。
それが企業間の競争を促進させ、経済発展の原動力となるものなら問題は生じない。 だが、社会的規範に背を向けた不公正なものや優越的地位の濫用、さらには産業振興上にマイナスとなるようなものなどであれば、諸外国の指摘を待つまでもなく、速やかに正さなければならない。

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